拳負傷原因 2008年5月28日更新
平成なってから拳を負傷する事故が多発している。
徳島大学日本拳法部でも単に拳を痛めるだけでなく最悪の場合は骨折した。
骨折箇所の大部分が手甲部の小指或いは薬指になった。
OB会で2001年に調査したところ昭和42年から平成3年迄は拳骨折は発生していない。
負傷原因を調査し対策するのはOB並びに拳法部指導者の責務と理解している。
部員の少ない徳大でも過去10年程度で5名以上が骨折した事実から考えると全国で100名以上/10年が骨折していると推定する。
私の知る限り拳法用グローブの改善はなされず逆に柔らかくなった感もある。
最近業務外の防具開発に関係し負傷原因を検討する事が出来た。
拳負傷原因について公開する事が日本拳法練習に役立ち、原因を知る大学拳法部指導者としての義務と考えた。
検討した原因推察は徳島大学日本拳法部OB会長としての私見である事を理解して読んでください。
7月から徳大では改良グローブを全部員が使用している。
私見が正しい証か全員が拳を痛める事もなく日本拳法を楽しめている。

拳負傷多発時期 平成4年頃から拳を痛める事故が多発し始めた。
拳負傷理由 日本拳法は金属棒(鉄製)を素材として面金を制作し防具面として使用している。
この防具面をグローブで直接打撃する事を最大の特徴としている。
金属棒の間隔は約5cmある。
最悪の場合は1本の金属棒を拳で打撃する。
慣性の法則により重たい面金ほど反発力が大きくなる。
また、手甲外側の骨は単独で面金に当たる可能性が高いく衝撃力が集中した場合は折れ易い。
大多数の練習生がグローブを着けた打撃時に金属棒の感触を知っている。
筆者の場合は感触を知ったら打撃はグローブの皮革表面だけで打つが初心者には出来ないので結果として負傷に繋がる。
手の骨
負傷防止の一般的な対応方法 初心者は人差し指と中指を中心とする拳で打撃するとは限らない。
どの程度の打撃感触で痛めるかが経験が少なく分からない。
多少痛めてからバンテージとか拳サポで保護度合いを高めるしか方策を知らない。
熟練者で少しでも器用な者はグローブ内部の打撃側にゴム板、ゴムスポンジ等を追加して拳を保護する。
間違った経験談 拳を負傷した練習者に時として「拳の鍛え方が足りない」と教える指導者が居る。
手の骨格写真から明らかなとおり鉄より固い人間の骨が存在するとは理解出来ない。
骨粗鬆症の様に個人差も大きく存在する。
熟練者は痛めない様に打撃するのが巧くなってる可能性が高いだけ。
若い頃の経験だけで年齢を経てから自身が防具練習から離れており、運良く痛める前に保護していたのを恐らく忘れている。
徳島大学渭水拳友会の原因推察 拳負傷多発時期は徳島大学日本拳法部が8mm防具面を購入し始めた頃と一致した。
昭和40年頃のグローブの中身は動物の毛だったと記憶している。
動物の毛は使っていると堅くはなるが内側は拳の形になり局部加重が発生し難い。
7mm面と8mm防具面を比較する為に打撃試験すると明らかに8mm防具面が重く感じる。
グローブの衝撃緩和特性が劣り、防具面が重くなった事が真の負傷原因であり、拳の鍛え方は不足していたかも知れないが優先する原因ではない。
徳島大学渭水拳友会の事故防止対策方針 明確に科学的原因が判らなければ適切な対策は出来ない。
大学運動部として安全に日本拳法を楽しむには事故防止を最優先する義務がある。
グローブの衝撃緩和対策は技術的知見があれば出来る可能性は高く、OB会として今春より本格的に取り組んだ。
拳の負傷は外見的に明らかであるが頭部打撃に基づく脳障害については発症するまで判らないのが極めて危険だ。
徳島大学渭水拳友会長としてグローブと並行して防具面の改良を実施する事にした。
防具面は重たいのが衝撃緩和に重要との考えもあるが衝撃緩和クッション材の適切な使用こそが最重要と判断し改良に取り組んだ。
現役徳大生部員と同OBを実態モルモットとして協力して頂いた。
当然の事だが、会長自身が最初のモルモットになり安全を確かめた上で実施した。
拳法・科学的知見など経験豊富な徳大教官・OB諸兄(拳法関係者以外も含む)の協力もあった。
徳島大学渭水拳友会の事故防止対策結果 面金を構成する金属棒の間隔が5cmと広いのが開発を困難にしていた。
拳、所謂正拳は平らでなく凹凸がありクッション材の多重構造(PAT.P)を必要とした。
打撃時の手首保護と打たれた側の衝撃緩和を考慮して最新の低反発クッション材を選定した。
動物毛或いは綿の如く使用できる低反発クッション材は市販品に見いだせ無かった。
素材は高価な為か市販拳法グローブには採用されていない。
価格よりも安全性を優先する考えからこの素材を採用した。
特殊加工し使用方法(PAT.P)を考案して問題を解決した。
グローブと防具面布団の専用クッション材として全面的に採用した。
改良グローブは素手で使用しても拳を痛める可能性は激減した。
改良防具面は衝撃を大幅に緩和し脳震盪が起こりにくくなった。
既にグローブは徳島大学及び一部関係者には試用して頂き好評である。
汗取り用の軍手だけ履いた手で改良グローブを全部員が一ヶ月程前から使用しているが拳は全く負傷しない。
この事実は拳の鍛え方云々よりもグローブ特性が悪かったとの判断が正しかった証になった。
改良防具の販売 安全性が高まった改良防具を「徳島大学方式拳法防具」として本年9月初旬からYTS山下技研が販売する。
日本拳法愛好者を増やすには安全な練習用防具を必要とする。
より安全な防具があれば青年期以降でも練習がし易くなる。
低価格で提供する為に原則として直接販売方式を採用する。